自然免疫と獲得免疫
ここでは、 「COVID-19と自然免疫力」にも登場し、24時間私たちの命を守っている自然免疫と獲得免疫との違いについて解説します。
自然免疫とは
●私たちの体には、皮膚をはじめとする様々なバリヤ機能がありますが、病原菌やウイルスなどはそのバリヤを突き破って体内に入ってきます。
これら、バリヤを突き破って入ってくる異物のことを、抗原と呼びます。
自然免疫とは、36億年前から私たちに備わっている防衛機能のことで、敵(抗原)の侵入に気がついて最初に駆けつける免疫反応のことを言います。
体が自然に反応する最初の免疫ということで「自然免疫」と呼ばれ、相手を特定せず、どんな敵に対しても無差別に攻撃を仕掛けます。
自然免疫系の部隊としては、リゾチームなどの酵素(タンパク質)が細菌の細胞壁を溶かす働きを持ち、マクロファージやNK細胞などの細胞は細菌を食べたり攻撃したりする働きを持っています。
獲得免疫とは
●一方、自然免疫部隊が対処できない抗原もあり、それらには獲得免疫という対応する仕組みがあります。
獲得免疫は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得される免疫です。
異物(抗原)に遭遇するたびに、それぞれの抗原ごとに最良の攻撃方法を学習し抗原を記憶します。
過去に遭遇した抗原に対し、それぞれに応じた攻撃をするために、学習し、適応し、記憶する能力がある優れた免疫システムで、一般に免疫と呼ばれる働きは、この獲得免疫のことを指す場合が多いようです。
獲得免疫のシステムはさらに、抗体という武器で細菌に対応する液性免疫と、キラーT細胞でウイルスに対応する細胞性免疫に分けられます。
液性免疫は、マクロファージや樹状細胞などの免疫細胞が、異物である細菌をバラバラに分解し分析することから始まります。
免疫細胞が分析した結果はT細胞に伝えられ、T細胞は抗原と戦う武器となる抗体の設計図をB細胞に伝え製造させます。
この時の抗体の設計図は免疫情報として記憶されていて、次に同じ抗原が入ってきた際には、すぐに対応する武器である抗体が製造され細菌を破壊する仕組みですが、戦った経験のない新しい抗原に接した時には、免疫ができるまでには少し時間がかかります。
インフルエンザの予防注射やワクチンは、この仕組みを利用したものです。
また細胞免疫は、細胞の中まで入り込んでくるウイルスに対応するため、ウイルスに感染した細胞を見つけ出しキラーT細胞が細胞ごと破壊する仕組みです。