オリゴ糖の功罪
もともとは、ダイエット用のノンカロリー甘味料として登場したオリゴ糖ですが、その後、腸内の善玉菌を増やす餌として有名になり、今や健康食品市場での知名度も圧倒的に高くなりました。確かに、ノンカロリー甘味料として糖分の取りすぎを抑制する効果はあると思います。もし、肥満やメタボリックシンドロームが、糖分の取りすぎによるものでしたら、十分効果はあるでしょう。
また糖尿病など、糖分の摂取を制限されている方には、必須の甘味料かもしれません。しかし個人的には、ここ50年間で3倍に増加した日本人一人当たりの脂肪の摂取量の増加、とりわけ動物性脂肪の摂取量が8倍に増えているという点こそが、メタボを代表とする生活習慣病の主な原因となっているのではないか、というのが私の意見です。砂糖の取りすぎ、ではなくて、です。ここまでオリゴ糖の機能性について疑問を呈する方は、おそらく私以外にはあまりいないかもしれません。
メタボと診断された方が、甘いモノ大好き人間かと言いますと、そうではありません。極端な話、糖分を控えていても糖尿病になりますし、医者が言うように、糖分のコントロールだけで糖尿病は治りません。多項で書いているように、メタボの原因は腸管の機能異常ですので、根本原因は糖の過剰摂取ではありませんので、オリゴ糖をせっせと飲んでもメタボは治りません。逆に、適度な糖分は脳をはじめとする我々の重要なエネルギー源でもあります。また、オリゴ糖が腸内の善玉菌の増殖を促し、腸内環境を善玉菌優性にする・・・という話についても、乳酸菌などの善玉菌は糖をエネルギー源として増殖し、特にビフィズス菌は食物繊維などの長い構造の糖をも分解して養分とする性質があることが理由です。
腸内の善玉菌が増えたか減ったかの判断は、排泄された便の中の菌や菌の死骸の数を一つ一つ数えて判断されます。確かにオリゴ糖を飲んだ(食べた)後の糞便中には、善玉菌と呼ばれる菌種が多くなり、逆に悪玉菌サイドの菌は少なくなるという結果が示されています。しかし、腸内の善玉菌が増えればそれで良いのでしょうか。また、製品としてのオリゴ糖は、過剰摂取により下痢をもたらすため、要注意です。
『 腸内菌の老化』の部分でも述べましたが、オリゴ糖をせっせと食べるなど、どんなにオリゴ糖のようなプリバイオティクスを食べて『老化した腸内細菌』を増やしても、良質な代謝物を分泌させる事は期待できない、という事実があるからです。確かに、若者の腸内であれば活性度の高い善玉菌が優勢ですので、オリゴ糖の摂取によって善玉菌が増えれば、それらの代謝物も増えることはあるでしょう。しかし、もともと若者は高齢者に比べて免疫力が高いので、通常食だけでも高い免疫力を維持することは可能と考えられます。糖の過剰摂取状態にある若者以外には、オリゴ糖は不要というわけです。
善玉菌が増える事こそが、免疫力を上げ健康になる早道なのだという「神話」は、考え直さなくてはなりません。