乳酸菌産生物質(乳酸菌産生エキス)とは何か
乳酸菌産生エキスとは、乳酸菌が増殖している間に産生し放出した成分を指します。
これらの成分は、乳酸菌産生物質と呼ばれたり乳酸菌産生エキス、乳酸菌培養産物など様々な呼称で呼ばれていますが、そもそも乳酸菌が産生した成分を一般の方が見る機会は稀なので、イメージが涌かないまま扱われていることが多いようです。 これらは『業界用語』化してしまった言葉で、実際、研究者の間では生産物、代謝物などと呼ばれています。
乳酸菌産生エキスは、よく蚕(カイコ)と絹に対比して例えられます。蚕は桑の葉を食べて絹糸を作り出しますが、桑の葉にはもちろん、蚕の体が絹でできているわけではありません。
桑の葉を栄養源として蚕が産生する絹糸が、我々が食べた食物を栄養源にして乳酸菌が産生物質を作り出す様子に例えられるわけです。
表:蚕と乳酸菌と生産物の利用
絹糸という貴重な生産物と同様に、腸内における乳酸菌の仕事は、ラクトザイムのような産生エキスを作り出すことにある、というイメージです。
実際の腸内での乳酸菌の役割は、まだ完全に解明されていませんが、蚕と絹のような関係とは少し違っています。
腸内フローラを構成する乳酸菌は、乳酸菌自体が腸壁に接触することで情報の受け渡し(抗原提示と言います)が行われ、免疫細胞を経由して様々な反応が起きることが分かっています。
この機能を目的として、生菌(せいきん:生きている菌)や死菌体がサプリメントとして販売されているわけですが、私たちは乳酸菌の仕事の大半は、実は絹、つまり産生物質を作って腸壁から吸収させることだと考えています。
大学や各方面の研究機関で乳酸菌のもつ様々な機能性が検証されていますが、それらの多くは菌体そのもよりも乳酸菌産生エキスによるものだとしたら、乳酸菌に対する一般的な見方も、かなり違ったものになるのではないでしょうか。
抗生物質としてあまりにも有名なペニシリンという製薬は、ペニシリンという名前のカビ菌の産生物質です。
ペニシリンというカビを飲んでも感染症は治りません。
絹を必要としている人に蚕(プロバイオティクス)を売ったり、クワの葉を売ったり(プリバイオティクス)するような商売は、目的は間違ってはいませんが効率が良い方法とは思えません。